障害年金

このページでは障害年金の概略を説明します。詳しい説明は次ページ以降になります。

 

障害年金は、病気や怪我が原因で障害が生じ、一定の条件を満たした場合に支給される公的年金です。

公的年金とは、高齢、病気、怪我、配偶者の死亡で収入が減少した国民を困窮から守る制度です。国民年金・厚生年金保険の加入者ならば、原則として一定の条件下で受給対象になります。

 

障害年金は3つある公的年金の1つです。

 

ちなみに、残りの2つは老齢年金と遺族年金です。老齢年金は原則65歳以上の人に支給される年金です。「年金」といえば老齢年金を指すほど、広く知られています。遺族年金は、家計の支え手が死亡した場合に遺族に支給される年金です。

 

 


目次

障害年金の種類

対象疾病

請求

書類審査

・受給額

・支給

・年金生活者支援給付金

障害年金の種類

障害年金には障害基礎年金障害厚生年金があります。

 

障害基礎年金は初診日(病気や怪我で最初に診療を受けた日)に

 

①国民年金の被保険者

②日本国内に居住し、過去に国民年金に加入していた60歳以上65歳未満の方

③国民年金に未加入の20歳未満の方

 

①~③のいずれかの方が請求できます。

 

障害厚生年金は初診日に厚生年金保険の被保険者が請求できます。障害厚生年金には一時金として支給される障害手当金もあります。

 

初診日に国民年金・厚生年金のどちらに加入していたかで障害年金の支給額が変わります。そのため、初診日に加入していた年金制度の種類が重要になります。

 

障害年金は、原則初診日に年金制度に加入していなければ支給されません。しかし、国民年金に加入する20歳より前に病気や怪我で障害状態になった、または生まれつき病気や障害がある方には「20歳前傷病の障害基礎年金」があります。


対象疾病

障害年金は多くの病気や怪我が対象になります。がん、糖尿病、人工透析、脳梗塞などの病気や怪我だけでなく、うつ病、発達障害、知的障害などの精神疾患も対象になります。ただし、人格障害や適応障害などは対象外になります。しかし、医師が精神疾患と同程度の症状と判断した場合、人格障害や適応障害も対象になることがあります。

 

対象となる病気や怪我は様々ありますが、障害年金は病気や怪我をしたら支給対象になるのではなく、病気や怪我が原因で障害が残り日常生活や仕事に支障が生じた場合に支給されます。

対象となる病気や怪我の一覧

部位 疾患
 頭  脳梗塞、脳軟化症、脳出血、脳脊髄液減少症、くも膜下出血など
白内障、緑内障、糖尿性網膜症、眼球萎縮、ブドウ膜炎、先天性弱視、小眼球症など
メニエール病、感音性難聴、突発性難聴、頭部外傷または音響外傷による内耳障害など
 外傷性鼻科疾患など
咀嚼・嚥下機能音声・言語機能 失語症、咽頭全摘出、咽頭摘出後後遺症、咽頭腫瘍、喉頭がん、上下顎欠損など
呼吸器疾患  肺結核、気管支喘息、じん肺、呼吸不全、慢性気管支炎、肺線維症、肺気腫、膿胸など
肢体

上肢または下肢の離断または切断、上肢または下肢の外傷性運動障害、椎間板ヘルニア、パーキンソン病、糖尿病壊死、進行性筋ジストロフィー、ギランバレー症候群、関節リウマチ、ポストポリオ症候群、繊維筋痛症、重症筋無力症など

精神

うつ病、双極性感情障害、統合失調症、てんかん、精神発達遅滞、ADHD、自閉症スペクトラム、アスペルガー症候群、広汎性発達障害、高次脳機能障害、若年性アルツハイマー、ダウン症候群、老年および初老期認知症、脳動脈硬化症に伴う精神病など

心疾患 心筋梗塞、心不全、狭心症、完全房室ブロック、大動脈弁狭窄症など
腎疾患 慢性腎炎、慢性腎不全、糖尿病性腎症など
肝疾患  肝硬変、肝がんなど
血液・造血器疾患  再生不良貧血、白血病、悪性リンパ腫など
代謝疾患  糖尿病、糖尿病と明示されたすべての合併症など
悪性新生物 胃がん、直腸がん、肺がんなど
高血圧  悪性高血圧、高血圧性疾患など
その他  ヒト免疫不全ウイルス感染症(HIV)、日光過敏症、人工肛門設置、尿路変更術、臓器移植、慢性疲労症候群、その他難病など

請求

障害年金は請求しなければ受給できません。病気や怪我で障害が残っても公的機関から通知が来るわけではありません。そのため障害年金の存在を知らず、受給資格があっても請求していない方が存在します。

 

請求はお近くの年金事務所街角の年金相談センター市区町村の窓口になります。


書類審査

障害年金は請求した人の提出した書類のみが審査対象となり、支給・不支給が決まります。

 

主な書類は、①年金請求書受診状況等証明書診断書病歴就労状況等申立書になります。

 

書類作成の上で重要なことは、病気や怪我で日常生活にどのような支障や困難が生じたかを詳しく記載することです。


受給額

障害基礎年金

障害基礎年金は定額が支給されます。受給額は年度によって変動がありますが、加入月数によって支給額の増減はありません。

 

令和7年度(年額)1級 103万9千625円+(子の加算額)   昭和31年4月2日以後生まれの方 

            103万6千625円+(子の加算額)    昭和31年4月1日以前生まれの方

         

         2級 83万1700円+(子の加算額)     昭和31年4月2日以後生まれの方

            82万9千300円+(子の加算額)     昭和31年4月1日以前生まれの方

 

子供がいる場合には「子の加算額」があります、要件は以下の通りです。

 

①18歳以後の最初の3月31日を迎えるまでの子

 または、

②20歳未満で障害等級1級、2級の障害状態にある子

 

①、②のいずれかを満たしていることです。

 

令和7年度(年額)加算額  子2人まで  1人につき23万9300円   

              子3人目以降 1人につき7万9800円

 

 

 

 

障害厚生年金

年金制度は2階建て構造になっているため、障害厚生年金1級、2級(2階部分)の場合、障害基礎年金(1階部分)も合わせて支給されます。ただし、障害厚生年金3級に障害基礎年金は支給されません。

 

障害厚生年金は加入月数や収入に応じて受給額が変化します。障害厚生年金には一時金として支給される障害手当金もあります。そして、障害厚生年金3級と障害手当金には最低保障額があります。

 

 計算式は以下の通りです。

令和7年度(年額) 1級 報酬比例の年金額×1.25+(配偶者加給年金額)+障害基礎年金1級
  2級  報酬比例の年金額+(配偶者加給年金額)+障害基礎年金2級
  3級  報酬比例の年金額  最低保障額62万3千800円(昭和31年4月1日以前生まれの方62万2千円)
  障害手当金 報酬比例の年金額×2 最低保障額124万7千600円 (昭和31年4月1日以前生まれの方124万4千円)

 

年収850万円未満で65未満の配偶者がいる方には「配偶者加給年金額」が加算されます。金額は23万9千300円(令和7年度)です。初診日に配偶者や子供がいなくとも、障害年金受給中に家族が増えた場合には届け出ることで「子の加算額」・「配偶者加給年金額」は受給できます。


支給

障害年金は支給決定した場合、障害認定日がある月の翌月から支給が開始します。1年に6回、偶数月に前月分を含めた2ヶ月分の支給額が自身の預貯金口座に振り込まれます。ただし、初回支給のみ奇数月に行われることもあります。

 

障害年金は死亡したり、障害状態でなくなる等の事態が起こらない限り支給されます。

 

障害年金は働きながらでも受給できますし、収入によって支給が止まることもありません。ただし、「20歳前傷病の障害基礎年金」は収入による支給制限を受けます。

支給調整

障害年金と業務上の病気や怪我による障害給付、障害年金と他の公的年金、障害年金と健康保険の傷病手当金の間では、それぞれ支給調整が行われます。

 

・障害年金と業務上の病気や怪我による障害給付

 同一の病気や怪我で障害年金と労災法の障害給付が受給できる場合、労災法の障害給付が支給調整されま 

 す。また、労働基準法の障害補償が支給される場合は、6年間障害年金が支給停止されます。

 

・障害年金と他の公的年金

 公的年金には1人1年金の原則がありますので、障害年金と老齢年金、または遺族年金同時に受給できま

 せ。もし、老齢年金または遺族年金を受給した場合、障害年金は支給停止になります。ただし、65歳以

 上になると次に述べる組み合わせで年金を受給できます。

 

 a.障害基礎年金+障害厚生年金

 b.老齢基礎年金+老齢厚生年金

 c.遺族基礎年金+遺族厚生年金

 d.障害基礎年金+老齢厚生年金

 e.障害基礎年金+遺族基礎年金

 

・障害年金と健康保険の傷病手当金

 同一の病気や怪我で障害年金と傷病手当金が支給できる場合は、健康保険の傷病手当金が支給調整されま

 す。ただし、同一の病気・怪我ではない、または同一の病気・怪我だが障害基礎年金のみ受給している場合は

 支給調整されず、傷病手当金は全額支給されます。

 


年金生活者支援給付金

年金生活者支援給付金は消費税が10パーセントに引き上げられた令和元年10月に始まった制度です。この制度は、収入が一定の水準に及ばない年金受給者を対象とした生活支援を目的としています。老齢基礎年金障害基礎年金遺族基礎年金の各年金受給者が対象者です。ここでは障害基礎年金生活者支援給付金について説明します。

障害基礎年金生活者支援給付金

・支給要件  ①障害基礎年金の受給者

       ②前年の所得が472万1千円+(扶養親族の数×38万円)以下であること

                             

この二つの要件をすべて満たすことです。

 

 ①障害年金等の非課税収入は年金生活者支援給付金の判定対象所得には含まれません。

  ②扶養親族等の数に応じて所得額が増額します。生計を同じくしている配偶者のうち70歳以上の方、ま

   たは老人扶養親族の場合は48万円、特定扶養親族または16歳以上19歳未満の扶養親族の場合は6

   3万円となります。

 

・支給額(令和7年度)    月額 1級6813円  

                                                            2級5450円  

 支給額は毎年度変動します。

 

・年金生活者支援給付金請求書の入手方法

 支給対象者には日本年金機構からはがき型の年金生活者支援給付金請求書が送付されます。

 

・申請方法

 年金生活者支援給付金請求書を年金請求書とともに年金事務所に提出します。

 

提出から1~2カ月して日本年金機構から審査結果の通知が届き、支給の場合には振り込み通知書が届きます。

 

支給日は障害年金と同じ日で、障害年金とは別途に振り込まれます。原則として請求月の翌月分から支給されます。

 

支給要件に該当している限り、2年目以降の手続きは原則不要です。支給要件に該当しなくなった場合、「不該当通知書」が届きます。

 

次のいずれかに該当した場合、給付金は支給されません。

 

①日本国内に住所がないとき

②年金が全額支給停止のとき

③刑事施設等に拘禁されているとき